行政書士と司法書士、どちらも人気のある国家資格ですが、「どちらを取るべきか迷っている」という方は多いのではないでしょうか。どちらも法律に関わる専門職ですが、試験の難易度や業務の内容、働き方には大きな違いがあります。
この記事では、両者の試験制度や仕事内容、将来性などを比較しながら、自分に合った資格の選び方について解説します。これから資格取得を目指す方が後悔しないために、ぜひ最後までチェックしてみてください。
行政書士と司法書士を比較
行政書士と司法書士について、なるための試験や仕事をした時のことなどについて比較してみました。
資格の試験に合格するためにかかる時間
●行政書士
約600時間
一般的に600時間くらい勉強する必要があると言われています。
●司法書士
約3000時間
一般的に3000時間くらい勉強する必要があると言われています。
ただこれはどちらも1回で試験に合格できた場合ですので、試験に落ちて再挑戦を重ねた場合はもっと時間がかかることになります。
アガルートアカデミーの調査によれば、行政書士の合格者の受験回数は、1回が41.5%、2回が20.5%、3回が20.2%で、2~3回受験する方が多いという結果になっています。
同じく司法書士試験に1回で合格した人の割合は11.5%。
受験回数が増えれば、当然かかる時間も増えますので、1回で合格でいる割合が少ない司法書士では、より多くの時間がかかってしまう可能性が高いです。
資格の試験内容
●行政書士
- 択一問題(マークシート)
法令科目として、憲法・民法・行政法・商法・基礎法学
基礎知識科目として一般知識・行政書士法・情報通信 個人情報保護・文章理解
- 記述問題
40文字程度の短い記述が行政法1問・民法2問
内容は、民法と行政法に重点がおかれています。
●司法書士
司法書士試験の科目はかなり多いし、行政書士試験と比べて難しいです。
筆記試験
- 択一式(マークシート)
憲法・民法・刑法・商法・民事訴訟法・民事執行法・民事保全法、司法書士法、供託法、不動産登記法、商業登記法
- 記述式
不動産登記法と商業登記法からそれぞれ1問ずつ出題されます。内容はかなり本格的な記述が必要となっています。不動産登記法と商業登記法のことをしっかりと理解していないと、対応できない内容です。
口述試験
筆記試験に合格すると、後日に口述試験があります。時間は15分位で面接形式となっています。
司法書士試験の方が範囲が広く勉強が大変なだけあり、試験科目も多くなっています。
資格試験の合格率
令和6年の結果は次のようになっています。
●行政書士
受験者数:47785人
合格者数:6165人
合格率:12.9%
●司法書士
受験者数:13960人
合格者数:737人
合格率:5.3%
行政書士試験を受験する方の方が、司法書士試験を受ける方に比べて4倍くらいとなっています。
司法書士試験の合格者は5.3%、毎年この位の合格率となっていますので、狭き門だといえるでしょう。
開業に必須の維持費
行政書士、司法書士、共に開業して仕事をするためには、行政書士会・司法書士会に登録しないと仕事ができません。そのため、登録に必要な金額が維持費として必須となっています。
●行政書士
入会金:25万~30万
年会費:7万円
●司法書士
行政書士会に比べて、年会費が高いので毎年の維持費が高いということになります。
入会金:8万~13万
年会費:20万円
(どちらも、どの行政書士会・司法書士会に入会するかによって、費用は変わります)
仕事の内容
●行政書士の仕事
-
官公署(役所)に提出する書類の作成・代理提出
例:許認可申請(建設業許可、飲食店営業許可、風俗営業許可など) -
外国人の在留資格やビザ申請の手続き
-
遺言書・遺産分割協議書などの作成支援
-
契約書や内容証明の作成
業務の幅が広く、主な業務は権利関係の書類、契約書などの作成です。
●司法書士の仕事
-
不動産登記・商業登記の代理
例:土地や建物の名義変更、会社設立の登記手続きなど。 -
簡易裁判所での訴訟代理
「認定司法書士」になれば、140万円以下の民事事件に限り、代理人として訴訟に出ることが可能。 -
裁判所や検察庁などに提出する書類の作成
-
成年後見制度の手続きなど
業務が専門的で、登記・裁判関係がメインとなっています。
どっちが稼げる?
司法書士も行政書士も、どちらも独立開業が可能な資格です。
実際に開業してうまくいけば、収入に大きな差はないとも言われています。
ただし、どちらの資格でも稼げていない人がいるのも事実です。
成功できるかどうかは、本人の営業力や実務スキル、地域性などにも左右されます。
一方、企業への就職に有利なのは司法書士です。
司法書士は不動産登記や会社法務などを扱うため、法務部門を持つ民間企業からのニーズがあります。
このため、就職という観点では、司法書士の方が有利と言えるでしょう。
行政書士は、もともと独立開業を前提とした資格という色合いが強く、企業内での需要は司法書士ほど多くありません。
社会的地位
資格試験の難易度や合格率の低さから見ると、司法書士の方が難関資格であり、合格者数も少ないため、専門職として一目置かれる存在といえます。
しかし、現実には、一般の人の大多数(おそらく95%以上)は、司法書士と行政書士の違いを明確に理解していません。
そのため、日常生活の中で「どちらの資格の方が上」といった意識が持たれることはあまりなく、社会的な地位に大きな差を感じる場面は少ないのが実情です。
どっちを取るのがいいか
コストパフォーマンスで考えるなら、行政書士の方が良いかもしれません。
必要な勉強時間が比較的短く、合格もしやすいため、時間や労力に対するリターンが大きいと感じる人も多いでしょう。
しかも、一般の人から見れば、行政書士と司法書士の難易度の違いはあまり意識されていません。
収入面でも、独立後の努力次第でどちらも大きな差は出にくいと言われています。
もちろん、これはあくまで個人的な意見です。
一方、司法書士は“玄人好み”の資格とも言えるかもしれません。
法律分野でやりたいことが明確にある人や、専門性の高い仕事を目指したい人には適しているでしょう。
さらに、司法書士は資格保有者が少なく希少性が高いため、競争が少ないという点もメリットです。
ただし、「裁判で活躍したい」という希望があるなら、司法試験(弁護士)を目指す方が良いという意見もあります。
司法書士が扱えるのは、140万円以下の簡易裁判所の案件に限られるため、扱える範囲は限定的です。
弁護士であればすべての訴訟に対応できます。
もっとも、弁護士になるには「勉強時間1万時間以上必要」と言われるほどの難関です。
そのため、「まず司法書士になり、そこから予備試験を受けて弁護士を目指す」というルートを選ぶ人もいます。
この方が、より現実的な選択だと考える人もいるでしょう
行政書士と司法書士のダブルライセンスはあり?
行政書士と司法書士の両方の資格(ダブルライセンス)を取得することに意味があるのか?という点について、私個人の考えでは、あまりメリットは大きくないと思っています。
まず、それぞれの資格にかかる登録料や会費などの維持費が重なるため、コスト面の負担が大きくなります。
また、行政書士と司法書士では取り扱う業務分野が異なり、専門性も高いため、
両方の資格を活かして仕事をするというのは、実際にはそれほど簡単ではありません。
もちろん、2つの資格をうまく組み合わせて活躍している人もいますが、「両方持っていれば万能になれる」というような単純な話ではないと思います。
まとめ
行政書士と司法書士は、それぞれに魅力がある資格です。行政書士は受験のハードルが比較的低く、業務の幅が広いのが特徴。一方で、司法書士は試験の難易度が高い分、専門性の高い仕事ができ、登記や裁判関係などで独自の強みがあります。
どちらが良い・悪いではなく、「自分がどんな働き方をしたいか」「どんな分野で活躍したいか」によって選ぶべき道が変わります。将来のビジョンを思い描きながら、自分に合った資格を選んでください。
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